結構久しぶりの一般小説。石田衣良はIWGPはもちろん、とくに好きなのは娼年で文庫を数冊(売っては手放し、売っては手放し)とKindle版を買っている。ひとつの文章が短くて、難しい言葉が一切なくて、読みやすい小説とはこのことだなと思う。
しかし本作、内容はすごいキツかった。どこがキツいかは個人によるだろうが、私は幼い頃の虐待から、幸せな日常をえがいているあたりがとても。途中で読むのがつらくなって、BL小説に逃げた。逆に殺ると決めてからはむしろサクサク読めた。
レビューを見ると泣いた、法廷のシーンがよかった、という意見が多いけど私はやっぱり虐待から幸せになったあたりがよかったと思う。このあとに人を殺してしまうことも知ってたし、結末も先に読んだのだが、そこかしこに散りばめられた未来でとんでもないことになると予感させるセンテンスが怖い。BL小説でもこのようなシーンは珍しくないが、読んでいて怖くなるようなものを書く作者には、めちゃくちゃ筆力があると感じる。
法廷で主人公は自分の人生が他人にとっての物語に還元されていくのを感じているんだけど、そのあたりの言葉は好きです。
で、偶然にもこれを読了したあとで、このニュースを見た。
めずらしくコンビニのおばちゃんにこの話題を振られて、驚いてしまったんだけど。別にこのニュースとこの事件はなんら重なる部分はないんだけど。
ただこの事件の犯人は、自殺したかった人を殺していたようなので、ニーズの一致がある(自殺したかった人が、殺されたかったはひとまずおいといて)。人が人を殺すことを、私はものすごく端的にいうと人間だからやるべきではないと思っているんだけど、死にたい、殺されたい人がいて、殺したい人がいて、そこが一致していればそれは他人がどうこういえる問題ではないのかも……。
劇的なニュースは広まるに従い、物語化して単純になって本来の意味を失うのだな、と思った。
ちなみに本作はドラマ化もしていて、中山優馬が主演だって。ちょっと見たいね。
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/07/03
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