初めて読んだのはずいぶん前で、映画を見ても内容をはっきりと思い出せないほどだった。もちろん映画の前に読み返す、という無粋なことはしない。
映画を見終わって改めて読み直した。かなりゆっくり。
虐殺器官とハーモニーどちらが好きかと聞かれれば、ハーモニーの方が好きなのだが*1、結末は虐殺器官の方が好きだ。
同意書にサインして母親を殺したこと、軍人として人を殺していることに実感のない彼が、ルツィアが死ぬのを目の前でみて、はじめて死を実感し、ジョン・ポールの言葉に耳を傾け、選んだ結末、最高じゃない!? 銃弾の音をBGMに部屋でのんびりピザ食ってる絵!
しかしそこは映画ではカットされているのだった……。
主人公の一人称で進むので、普段あまりSFを読まない人にも読みやすいのではないかと思うけど、一人称の弱点は、主人公が嫌いだと読めないことだ。
クラヴィスのかなりマザコンで、少年のままの感じ、私は好きだけど。映画では中村悠一の声で喋るので、記憶にぼんやり残るクラヴィスの内面とのギャップが発生し、たまらない萌えだったけど。
外面と内面がちぐはぐな彼が、母の記録を見て、空虚になったところに、あの結末を選択した、ということが私にとってはすごい浪漫だったのだ。
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