パラレルワールドのSF小説。作者がラノベも書いているのもあり、だいぶラノベよりで読みやすい。一気に読んでしまった。
この小説は同じ人間が主人公の、別々の世界の物語である。ここで「どっちから読むか問題」が発生する。どっちから読むかで物語の印象が変わるし、初読の感想は1度しか味わえないので生きるか死ぬかの決断にも近い。
ぜひゆっくり迷って下さい。
ちなみに私は「僕が愛したすべての君へ」から読んだ。「君を愛したひとりの僕へ」から読むと、おそらく「僕が愛したすべての君へ」が結末になる。
「僕が愛したすべての君へ」から読むと、「君を愛したひとりの僕へ」が物語の行間を補完するだろう。
さて、二次創作でつがいの片方が死んだとき、もうひとりはどうするか? のアンサーを私はここに見た。
キャラの解釈は無数にあり、追って自死してもよいし、世界を滅ぼしてもよいし、そこで物語を終えてもよいし、見なかったことにして幸せな世界線を描き続けてもよい。
私の好きなキャラクターはよく死ぬけど、無意味に死ぬキャラはそんなにいないので、わりと死を受け入れる方向で生きていくけど、死を受け入れられないなら、過去を生きるしかないな…。
主人公、結構好きだけど、第2あるいは第3の女・瀧川和音が、主人公のことをどっちの作品(世界)でも好きだということが、いいなと思った。
「僕が愛したすべての君へ」と「君を愛したすべての僕へ」で主人公は大きく違った運命を歩むけど、瀧川和音はどちらも主人公を愛しているという事実が、もう一つの軸……というか、揺らぐ平行世界を固定させているみたいで、うまいなあと。
面白かったので記憶を消して、順序逆で読みたい。

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君を愛したひとりの僕へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-2)
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